路線価と実勢価格の乖離が大きい不動産の特徴──「路線価で分けて損をする」のはどんな家か
路線価は実勢価格の8割程度とされますが、実際の乖離は不動産ごとに大きく異なります。乖離が特に大きくなりやすい不動産の特徴を整理し、遺産分割で「どの数字で分けるか」を考える手掛かりをご提供します。

遺産分割の話し合いで、相続税申告に使った路線価(相続税を計算するために国税庁が毎年公表する道路ごとの土地単価)をそのまま分割の基準にしようとするケースは少なくありません。路線価は公示価格水準の8割程度を目安に設定されているため、そもそも時価より低めの数字です。しかも、この乖離の大きさは不動産によってまったく違います。
乖離が大きくなりやすい不動産の特徴
私たち鑑定士の経験則として、次のような不動産は路線価と実勢価格の差が開きやすい傾向があります。
都心部・人気エリアの土地。地価上昇が続く地域では、年1回しか改定されない路線価が市場の動きに追いつかず、実勢価格が路線価を大きく上回ることがあります。
マンション、特に都心のタワーマンション。マンションの相続税評価は土地の持分と建物の固定資産税評価額をもとに計算されるため、市場での取引価格との差が開きやすい典型例です。評価方法の見直しが行われた後も、物件によっては相応の差が残ります。
収益物件。賃貸アパートや貸しビルは、市場では賃料収入をもとにした収益性で価格が形成されます。路線価による評価はこの収益性を直接反映しないため、収益力の高い物件ほど乖離が生じやすくなります。
逆に、路線価が実勢価格を上回ることもある
見落とされがちですが、乖離は「路線価のほうが低い」方向だけではありません。郊外や地方の需要が弱い地域、間口が狭い・形が悪いなど市場で敬遠される土地では、実勢価格が路線価を下回ることがあります。この場合、路線価で分割の合意をすると、その不動産を取得した相続人が実際には売れない価格を前提に代償金を払う、という逆転が起こり得ます。
遺産分割では「時価」で分けるのが原則
相続税の計算と、相続人の間で財産を分ける遺産分割は、別の場面です。遺産分割の実務では、不動産は時価(市場で実際に成立するであろう価格)を基準に分けるのが原則とされています。路線価は誰でも確認できる便利な数字ですが、乖離の大きい不動産でそのまま使うと、取得する側・代償金を受け取る側のどちらかが数百万円単位で不利になることがあります。
想定されるケースとして、路線価評価4,000万円の都心マンションの実勢価格が6,000万円であれば、どちらの数字で代償金を計算するかで、相手方に支払う金額は1,000万円変わります(法定相続分2分の1の場合)。
なお、相続税申告における評価は税理士の職域です。税務上の取扱いは税理士にご確認ください。
まとめ
- 路線価は公示価格水準の8割程度が目安で、乖離の大きさは不動産ごとに異なる
- 都心の土地・マンション・収益物件は乖離が大きくなりやすく、条件の悪い土地では逆転もある
- 遺産分割は時価で分けるのが原則。路線価をそのまま使う前に、乖離の程度を確認する価値がある
路線価と時価の関係は路線価と時価の違いでも詳しく解説しています。「うちの不動産は乖離が大きいのか」という段階のご相談も歓迎します。お問い合わせからお気軽にどうぞ。
免責事項
本記事は不動産鑑定評価の観点からの一般的な情報提供を目的としています。個別の税務に関する助言は税理士、法務に関する助言は弁護士など各専門家へお問い合わせください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の制度・判例等により取り扱いが変わる可能性があります。
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