TOPIC / 評価の基準時

評価の基準時は、相続開始時か。遺産分割時か。

相続が開始してから遺産分割がまとまるまで、数年かかることは珍しくありません。その間に不動産の価格が動いていたら、どの時点の価格で分けるのか。遺産分割で見落とされやすい論点です。

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このページの結論

  • 遺産分割では、実務上「遺産分割時」に近い時点の時価で評価する扱いが一般的です。
  • 遺留分侵害額の算定は「相続開始時」の時価が基準とされます。特別受益の持戻しも相続開始時が基準とされる扱いが一般的です。
  • 相続開始から協議・調停まで年数が経つと価格が動き、どの時点で評価するかが取り分に直接影響します。
  • 不動産鑑定評価では価格時点を過去に設定できるため、相続開始時の価格を今から算定することが可能です。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

場面によって、基準時が違う

「不動産をいつの時点の価格で評価するか」は、ひとつの相続の中でも場面によって答えが変わります。同じ物件なのに、遺産分割では今の価格、遺留分では数年前の価格、と使い分けることになるのです。

場面ごとの評価の基準時(実務の一般的な扱い)
場面基準時考え方
遺産分割(協議・調停・審判)遺産分割時実際に分ける時点の価値で公平に分けるため
遺留分侵害額請求相続開始時遺留分は相続開始時の財産を基礎に算定されるため
特別受益の持戻し相続開始時生前贈与された財産を相続開始時の価額に引き直して計算するのが一般的な扱い
相続税申告相続開始時課税のための評価。税務上の取扱いは税理士にご確認ください

※ 実務の一般的な扱いの紹介です。個別事案における基準時の主張は弁護士にご相談ください。

特に注意したいのは、遺産分割の基準時が「相続開始時」ではないことです。相続税の申告を相続開始時の評価で済ませているため、遺産分割も同じ数字でよいと考えてしまいがちですが、実務上、遺産分割は実際に分ける時点に近い時価で評価する扱いが一般的とされています。

相続開始から遺産分割までの間も、価格は動き続ける
  1. 基準時 A

    相続開始時

    遺留分・特別受益の持戻しはこの時点の時価が基準とされる

  2. 係争中

    協議・調停

    この間も不動産価格は動き続ける

  3. 基準時 B

    遺産分割時

    遺産分割はこの時点に近い時価で評価する扱いが一般的

※ 実務の一般的な扱いの紹介です。個別事案での基準時の主張は弁護士にご相談ください。

価格が動くと、何が起こるか

相続開始時に3,000万円だった実家が、協議が長引くうちに3,600万円になっていたとします。相続人2人で2分の1ずつ分け、一人が実家を取得して他方に代償金(不動産を取得しない相続人が受け取る清算金)を支払うケースで、どちらの時点の価格を使うかを比べます。

相続開始後に価格が上昇したケース(相続人2人・2分の1ずつ)
評価時点評価額代償金(2分の1)
相続開始時3,000万円1,500万円
遺産分割時3,600万円1,800万円

※ 説明のための仮の数値です。下落局面では逆の関係になります。

差は300万円。ここ数年の都市部のように市況が動いた時期に協議の期間が重なっていると、この差はさらに大きくなり得ます。どの時点を前提に主張するかは法律上の問題ですが、主張するためには、その時点の価格を根拠をもって示す資料が必要です

資料を示しながら説明する様子

相続開始時点の価格と現在の価格、両方の評価をまとめてお出しすることもできます。どの時点の評価が必要になりそうか、手続の状況をうかがって整理します。

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過去時点の評価ができるのは、鑑定評価の特徴

仲介会社の査定は「いま売り出したらいくらか」を答えるものなので、原則として現在時点の価格しか出せません。数年前の相続開始時点の価格を根拠をもって示すことは、査定の仕組み上むずかしいのです。

不動産鑑定評価では、価格時点を過去の特定の日に設定する評価が認められています。当時の取引事例、地価公示、市場動向の資料に基づいて、その時点の価格を算定します。遺留分侵害額の算定のように相続開始時の評価が必要な場面では、実質的に鑑定評価が唯一の手段になります。

なお、過去時点の評価は収集する資料が増えるため、現在時点の評価より費用と時間がかかる場合があります。お見積りの際にご説明します。

よくあるご質問

相続開始から5年経っています。どの時点の価格で評価しますか。

遺産分割であれば、実務上は現在(遺産分割時)に近い時点の時価で評価する扱いが一般的です。相続税申告のときの評価額をそのまま使う必要はありません。一方、遺留分侵害額請求であれば相続開始時が基準とされるため、5年前の時点に遡った評価が必要になります。どの場面のための評価かで答えが変わりますので、状況をお聞かせください。

過去の時点の価格を、今から評価できるのですか。

できます。不動産鑑定評価では価格時点を過去に設定する評価が認められています。当時の取引事例や地価公示などの資料に基づいて評価するため、現在時点の評価と同等の手順で作成できます。相続開始時の評価が必要な遺留分の場面などで用いられています。

遺産分割と遺留分の両方が問題になっています。評価は2つ必要ですか。

基準時が異なるため、厳密にはそれぞれの時点の評価が必要になり得ます。同じ物件について複数時点の評価をまとめてご依頼いただくことも可能で、その場合は個別に2件ご依頼いただくより費用を抑えられることが一般的です。どの時点の評価が必要かの整理からお手伝いします。

相続税申告のときの評価額を、そのまま遺産分割に使えませんか。

相続税申告の評価額は、相続開始時を基準に路線価等(課税のための価格)で算定したものです。基準時も価格の性質も、遺産分割で用いる「分割時の時価」とは異なります。相続人全員が納得していれば使うこと自体は妨げられませんが、時価との差を確認したうえで判断されることをおすすめします。税務上の取扱いは税理士にご確認ください。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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