PROPERTY / 土地・借地権・底地

個別性の強い土地ほど、路線価と実勢はずれる

整形な更地ならまだしも、広すぎる土地、形の悪い土地、道路に接していない土地、貸している土地──個別性や権利関係が絡んだ途端、「路線価×面積」の金額と市場の実勢は大きくずれ始めます。

更地

このページの結論

  • 更地でも「路線価×面積」では時価になりません。広い土地・不整形地・無道路地は路線価と実勢の乖離が特に大きい類型です。
  • 借地権の評価に路線価図の借地権割合を機械的に掛ける計算は、課税のための簡便法であり、市場価値とずれることがあります。
  • 底地(貸している土地)は更地価格から大きく減価した水準で取引されるのが通常で、仲介査定では価格が出にくい類型です。
  • 権利の評価は不動産鑑定士の本来業務です。査定を断られた土地こそご相談ください。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

更地の評価──「路線価×面積」で済む土地、済まない土地

相続した土地の分け方を話し合うとき、手元にある数字は多くの場合、相続税申告に使った「路線価(相続税・贈与税の計算のために国税庁が定める道路ごとの価格)× 面積」の評価額です。路線価は時価の8割を目安に設定されているため、この金額をそのまま分割の基礎にすると、土地を取得する相続人が有利になり得ます。

さらに、次のような土地では「2割の差」では収まらない乖離が生じることがあります。

  • 広い土地:住宅地として広すぎる土地は、分割の造成費や開発リスクが織り込まれ、単価が周辺の標準的な宅地より下がることがあります。
  • 不整形地・旗竿地:路線価の補正率で機械的に計算した結果と、市場での評価は一致しないことが多くあります。
  • 無道路地・接道条件の悪い土地:建築基準法上の道路に接していない土地は再建築ができず、価値が大きく下がります。減価の程度は評価者の判断が割れやすい論点です。
  • 高低差・擁壁のある土地:造成費用の負担として価格に織り込まれます。

鑑定評価では、取引事例の土地と対象地の個別性を項目ごとに比較して補正し、その過程を鑑定評価書に明記します。「なぜこの単価なのか」を他の相続人が検証できることが、遺産分割の場面での価値です。

借地権と底地──割合を掛けるだけでは済まない

亡くなった方が借地の上に家を持っていた場合は借地権(建物所有を目的に土地を借りる権利)が、土地を貸していた場合は底地(借地人に貸している土地の所有権)が、それぞれ遺産に含まれます。どちらも「更地価格 × 借地権割合(路線価図に示される6割・7割などの割合)」という計算が知られていますが、これは相続税の課税のための簡便法です。

市場での価値は、次の要因で計算どおりにならないことが多くあります。

  • 地代の水準:周辺相場より地代が低ければ借地人に有利に働き、借地権の価値を押し上げます。底地側から見れば逆です。
  • 契約の残存期間と更新の見込み:旧法借地権か新法か、定期借地権かで前提が変わります。
  • 譲渡承諾の見込み:借地権の売却には地主の承諾(と承諾料)が必要で、承諾が得にくい借地権は流動性が下がります。
  • 相手方との関係:借地人・地主間での売買や、底地と借地権をまとめて第三者に売る余地があるかで、実現できる価格が変わります。

特に底地は、地代収入に基づく収益価格と更地価格に対する割合的な水準の両面から検討する必要があり、仲介査定では根拠のある価格が出にくい代表的な類型です。借地権・底地の鑑定評価書の費用は30万円〜50万円(税別)が目安です。

資料を示しながら説明する様子

土地の所在と権利関係(所有権・借地権・底地)、契約書の有無をうかがえれば、評価の進め方と費用の見当をお伝えします。

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よくあるご質問

路線価に面積を掛けた金額で分けようと言われています。

路線価は時価の8割を目安に設定された課税のための価格です。加えて、広い土地・不整形地・無道路地などは路線価の補正計算と市場の評価が一致しないことも多く、乖離は「2割」では収まらない場合があります。全員が納得しているなら路線価ベースの合意も可能ですが、土地の個別性が強いほど時価を確認する価値があります。

親が貸していた土地(底地)を相続しました。いくらの資産と考えればよいですか。

底地は借地人がいる限り自由に使えないため、更地価格から大きく減価した水準で取引されるのが通常です。更地価格に「1−借地権割合」を掛けた金額が使われることもありますが、市場での底地の価値は地代水準や借地人との関係に左右され、この計算どおりにならないことが多くあります。地代収入に基づく収益性もあわせて検討する必要があります。

借地の上に建つ実家を相続します。借地権も遺産に入りますか。

借地権は財産的価値のある権利として相続の対象になるのが一般的な整理です。遺産分割や遺留分の計算ではその評価額が問題になります。相続に伴う地主との法律関係(承諾の要否等)は弁護士にご確認ください。当方は借地権の時価評価を担当します。

田畑や山林も相続しました。評価できますか。

農地・山林は取引市場が限られ、農地法の制限(転用・売買の許可)もあるため、宅地とは異なる評価になります。所在と現況をうかがったうえで、評価の要否を含めてご提案します。遺産全体に占める比重が小さい場合は、費用をかけて鑑定評価するまでもないケースもあり、その場合は率直にお伝えします。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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