TOPIC / 分割の4つの方法

遺産分割の4つの方法。どれを選んでも、出発点は時価。

預貯金と違い、不動産は切って分けられません。分け方は、現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つに整理できます。そして、どの方法を選ぶにも「その不動産がいくらか」を確定させることが先です。

日本の住宅

このページの結論

  • 現物分割は財産をそのまま割り振る方法、代償分割は取得者が他の相続人に代償金を支払う方法です。
  • 換価分割は売却して代金を分ける方法、共有分割は持分で共有する方法です。
  • どの方法でも、公平かどうかを判断する物差しは不動産の時価です。時価が曖昧なまま方法を選ぶと、後から不公平感が噴き出します。
  • 「とりあえず共有」は一見公平に見えますが、次の相続で紛争の種になりやすい選択です。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

4つの方法の仕組み

遺産分割協議(相続人全員の話し合い)では、次の4つの方法を単独で、あるいは組み合わせて使います。

  • ① 現物分割:財産をそのままの形で割り振る方法です。「実家は長男、預貯金は二男」のように分けます。土地であれば、分筆(一つの土地を複数に分けて登記すること)して各自が取得する形もこれに含まれます。
  • ② 代償分割:一人の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人へ代償金(取り分の差を埋める清算金)を支払う方法です。実家に住み続けたい相続人がいる場合の典型的な選択肢です。
  • ③ 換価分割:不動産を売却し、その代金を相続分に応じて分ける方法です。誰も不動産を使う予定がない場合に適しています。
  • ④ 共有分割:不動産を相続分に応じた持分で共有する方法です。結論を先送りできる一方、後述のリスクがあります。
4つの方法の比較
方法向いているケース注意点
現物分割財産の種類が複数あり、組み合わせで公平に割り振れる場合各財産の時価が揃わないと、組み合わせの公平性を検証できない
代償分割実家に住み続けたい相続人がいる/事業用不動産を承継させたい場合取得者に代償金の支払能力が必要。代償金の額をめぐり評価の争いが起きやすい
換価分割誰も不動産を使う予定がなく、現金で公平に分けたい場合売却の手間と費用がかかる。譲渡所得などの税務は税理士にご確認ください
共有分割協議がまとまらず、やむを得ず結論を先送りする場合処分・活用に共有者の足並みが必要。次の相続で権利関係がさらに複雑化

残すなら代償分割、手放すなら換価分割

実務のご相談で選択を迷われることが多いのは、「誰かが取得して残す」代償分割と、「売って現金で分ける」換価分割の二択です。性格が対照的なので、並べて比べます。

代償分割と換価分割の性格の違い

代償分割(残す)

実家や事業用不動産を承継したい場合

  • 不動産を手放さずに済む
  • 取得者に代償金の資力が必要
  • 市場で売らないため成約価格が観測できない
  • 評価額の争いが最も起きやすい

換価分割(手放す)

誰も使う予定がない場合

  • 成約価格という客観的な金額で精算できる
  • 現金なので1円単位で公平に分けられる
  • 売却の手間・費用・期間がかかる
  • 思い入れのある実家を手放すことになる

代償分割は、売却しないがゆえに市場の成約価格が観測できず、評価の対立が最も起きやすい方法です。取得する側は低い評価を、代償金を受け取る側は高い評価を主張しがちで、双方が自分に有利な査定書を持ち寄ると協議は膠着します。だからこそ、第三者である不動産鑑定士の評価で議論の土台をそろえる意味が大きい場面です。

どの方法でも、出発点は「いくらか」

4つの方法のどれを選んでも、時価の確定は避けて通れません。

  • 現物分割:「実家は長男、アパートは二男」という割り振りが公平かどうかは、それぞれの時価が揃って初めて検証できます。
  • 代償分割:代償金は「不動産の時価×他の相続人の相続分」が出発点です。評価額の差がそのまま代償金の差になります。
  • 換価分割:最終的には成約価格で精算しますが、売り出し価格の設定と、「売るより取得したほうがよいのでは」という比較検討には時価が必要です。
  • 共有分割:持分の割合を決める前提として、また将来共有を解消する場面では持分の評価が必要になります。

方法の議論と金額の議論を同時に始めると、話し合いは混乱します。先に時価をそろえ、そのうえで方法を選ぶ。この順序にするだけで、協議は感情論に流れにくくなります。

資料を示しながら説明する様子

どの分け方にするか決まっていない段階でも、まず時価の目安をそろえるところからお手伝いできます。話し合いの段階なら価格等調査報告書、調停・審判に進むなら鑑定評価書と、手続に応じた資料をご提案します。

分け方の前提となる評価を相談する

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「とりあえず共有」の将来リスク

協議がまとまらないとき、「とりあえず皆で共有にしておこう」という結論は魅力的に見えます。持分どおりに分ければ一見公平で、誰も実家を手放さずに済むからです。

しかし共有には、売却や大規模な修繕・建替えに共有者全員の同意が必要になる、賃貸に出すにも持分の過半数の同意が要るなど、単独では何も決められなくなる性質があります。さらに共有者に相続が発生すると、持分はその相続人へ細分化されて引き継がれ、面識のない親族同士が共有者になっていきます。世代を重ねるほど、話し合いの当事者は増え、合意は遠のきます。

よくあるご質問

4つの方法は、どうやって決まるのですか。

まずは相続人全員の遺産分割協議で自由に決められます。協議がまとまらず調停・審判に進んだ場合、審判では現物分割を基本としつつ、代償分割・換価分割・共有分割が検討される順序が一般的とされています。どの方法を主張していくかは法律上の判断を含むため、弁護士にご相談ください。

代償金を払う資力がない場合はどうなりますか。

代償分割は、取得する相続人に代償金の支払能力があることが前提になります。資力が乏しい場合は、換価分割(売却して代金を分ける方法)が現実的な選択肢になることが多いと考えられます。分割払いなどの設計は法律実務の範囲ですので、弁護士にご相談ください。

換価分割なら、評価は不要ではないですか。

実際の成約価格で精算するため、評価をめぐる争いは小さくなります。ただし、売り出し価格の設定や、仲介会社の査定額が妥当かどうかの判断には時価の把握が役立ちます。また「売るか、誰かが取得するか」を比較検討する段階では、取得する場合の代償金を試算するために時価が必要です。

どの方法がよいか、鑑定士に決めてもらえますか。

どの方法を選ぶかは、相続人の皆さまのご意向と法律判断に関わるため、当方が決めることはできません。当事務所がお手伝いできるのは、その判断の土台となる時価を根拠をもって示すことと、方法ごとに評価がどう使われるかをご説明することです。方法の選択に迷われている段階のご相談も歓迎します。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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