SITUATION / 遺産分割協議

話し合いの入口で、評価額の土台をそろえる

遺産分割の話し合いには、金額の話と感情の話が同時に流れ込みます。実家の値段が曖昧なままだと、金額の議論がそのたびに「兄さんばかり」「私は介護をした」という話に戻ってしまう。先に数字の土台をそろえることは、話し合いを短くする投資です。

話し合いのテーブルで交わされる握手

このページの結論

  • 協議段階では、鑑定評価書より費用を抑えた価格等調査報告書(10万円〜)で足りることが多いです。
  • 第三者の数字を先に置くことで、「高い・安い」の水掛け論を「この根拠のどこに異論があるか」の議論に変えられます。
  • 相続人共同でのご依頼も可能です。費用を分担でき、全員が同じ数字を見て話せます。
  • 争いが深まり調停に進む可能性が出てきたら、鑑定評価書への切り替えを検討します。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

協議が止まる理由は、たいてい数字がないこと

遺産分割協議でよくあるのは、「実家をどうするか」の議論が進まないまま、預貯金の分け方も含めて話全体が止まってしまうパターンです。誰かが住み続けるのか、売るのか、代償金(不動産を取得する相続人が他の相続人に支払う金銭)はいくらか──どの選択肢を検討するにも、実家の値段がわからなければ比較のしようがありません。

そして、ある相続人は相続税申告に使った路線価ベースの金額を、別の相続人は仲介会社の査定額を持ち出すと、金額が数百万円ずれます。「自分に有利な数字を持ってきたのだろう」と疑心暗鬼になり、そこに長年の介護の負担や実家への思いが流れ込む。金額の議論が、感情の議論にすり替わってしまいます。

第三者である不動産鑑定士の評価は、この構図を変えるための道具です。どの相続人の味方でもない立場から、根拠を明示した数字を先に置く。合意できるかどうかはその先の話ですが、少なくとも何について合意できていないのかが明確になります

協議段階に合った資料の選び方──段階を踏む設計

当事務所では、協議段階のご相談にはまず価格等調査報告書(10万円〜15万円・税別)をご提案することが多いです。不動産鑑定評価基準に則った正式な鑑定評価書ではありませんが、調査価格とその根拠を記載した報告書で、話し合いの土台としては十分に機能します。そのうえで、争いが深まったときに鑑定評価書(20万円〜60万円・税別)へ進む、という段階設計です。

  • まず全員で相場観を共有したい → 価格等調査報告書
  • 他の相続人の提示額がおかしい気がする → セカンドオピニオン
  • すでに主張が対立し、調停も視野に入っている → 最初から鑑定評価書

相続人共同での依頼という選択肢

遺産分割の評価は、相続人のお一人からのご依頼だけでなく、相続人の皆さまが共同でご依頼いただくこともできます。共同依頼には、協議の場面ならではの利点があります。

  • 費用を分担できる:たとえば価格等調査報告書12万円を相続人3人で分担すれば、お一人あたり4万円です(金額は説明のための仮の数値です)。
  • 「誰の数字か」という疑念が消える:一人が単独で取得した資料は、それだけで「その人に有利なのでは」と見られがちです。全員で依頼した資料は、その入口の疑念を持たれにくくなります。
  • 説明を全員が同時に聞ける:納品時のご説明に相続人の皆さまが同席いただければ、評価の根拠についての理解の差も生じにくくなります。

なお、共同でご依頼いただいた場合でも、不動産鑑定士は特定の相続人に有利な評価を行いません。この点はお一人でのご依頼でも同じです。

協議書に、評価の根拠を残しておく

協議がまとまったら、合意内容は遺産分割協議書に落とし込まれます。このとき、合意した評価額の根拠となった資料を協議書とともに保管しておくことをおすすめしています。年月が経ってから「あのときの金額は安すぎた」という話が出た場合に、どのような資料に基づき、どのような経緯で合意したのかを説明できることは、蒸し返しを防ぐ一助になります。

資料を示しながら説明する様子

いまの話し合いの状況をうかがい、どの資料をいつ用意するのがよいかをご提案します。まだ協議が始まっていない段階のご相談も歓迎します。

協議段階の進め方を相談する

初回相談無料/ご相談内容を他の相続人に伝えることはありません

CASE

想定されるケース

※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。

CASE 01

長男は路線価ベース、二男は仲介査定。差は800万円

状況

実家を取得したい長男は相続税申告で使った2,400万円を、代償金を受け取る二男は仲介会社の査定3,200万円を主張(金額は説明のための仮の数値です)。互いに「相手の数字は都合よく選んだものだ」と感じ、協議が数か月止まっている。

評価資料を用意した場合

第三者の調査価格が根拠付きで示されることで、2つの数字がなぜ違うのか(課税のための価格と市場の価格の性質差)から説明できます。金額の対立が「根拠の検討」に変わり、協議を再開する土台ができます。

CASE 02

実家に住み続ける長女と、代償金の額がまとまらない

状況

母と同居してきた長女が実家に住み続ける方向では一致しているが、長女が他の相続人2人に支払う代償金の額で折り合えない。介護の負担をめぐる感情のもつれも重なっている。

評価資料を用意した場合

時価が定まると、代償金の計算の出発点が定まります。寄与分など法的な調整は弁護士の先生の領域ですが、少なくとも「いくらを基準に調整するのか」という土台ができ、感情の議論と金額の議論を切り分けやすくなります。

よくあるご質問

話し合いの段階から鑑定評価書が必要ですか。

多くの場合、必要ありません。協議の段階では、費用を抑えた価格等調査報告書(10万円〜15万円・税別)で「議論の土台になる数字」を用意すれば足りることが多いです。争いが深まり、調停・審判に進む見込みが出てきた段階で、鑑定評価書への切り替えをご検討ください。

他の相続人が提示してきた金額が妥当か、確かめられますか。

できます。セカンドオピニオン(5万円〜・税別)として、提示された査定書等の前提条件・採用事例・計算過程を不動産鑑定士が検証します。検証の結果、妥当な水準であればその旨をお伝えしますので、不要な対立を避ける判断材料にもなります。

相続人全員で共同して依頼することはできますか。

できます。むしろ遺産分割では、相続人の皆さまが共同でご依頼くださる形をおすすめしています。費用を人数で分担でき、全員が同じ数字を同じ根拠とともに見られるため、「誰かに有利な数字ではないか」という疑念が生じにくくなります。共同でご依頼いただいた場合も、評価が特定の相続人に有利に傾くことはありません。

遺産分割協議書に評価額を書くとき、注意することはありますか。

遺産分割協議書の作成や条項の設計は弁護士・司法書士の先生の職域であり、書き方の法的助言は当事務所ではできません。評価の面から申し上げられるのは、合意した金額の根拠資料(報告書や鑑定評価書)を協議書とともに保管しておくと、後日「あの金額はおかしかった」という話になったときに、当時の合意の経緯を説明しやすくなるということです。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

電話で相談無料相談を申込む