SITUATION / 生前対策・遺言

残される家族に、争いの種を残さない

相続をめぐる争いの多くは、亡くなった後の「その不動産、いくらなの」から始まります。遺言で分け方を決めておくなら、その前に時価を把握しておく。それだけで、家族が将来向き合う火種をひとつ減らせます。

窓辺から庭を望む住まい

このページの結論

  • 遺言で決めた分け方が公平かどうかは、不動産の時価がわからなければ検証できません。
  • 遺留分(兄弟姉妹以外の相続人に法律上保障された最低限の取り分)を侵害する遺言は、亡くなった後の紛争の火種になります。
  • 生前の資産棚卸しには、費用を抑えた価格等調査報告書(10万円〜15万円・税別)が適しています。
  • 遺言書の作成そのものは公証人・弁護士の先生の領域です。当事務所は評価の面から連携します。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

「公平に分けたつもり」が、争いの始まりになる

遺言を書く方の多くは、家族が揉めないようにと考えて分け方を決めます。ところが不動産が含まれると、「公平に分けたつもり」と「実際の金額の公平」がずれることがあります。

たとえば、長男に実家を、二男に預貯金を、という分け方。実家の価値を固定資産税の通知書や相続税路線価(相続税の計算のために国税庁が定める道路ごとの価格)の感覚で見積もっていると、実際の時価とは大きく差が出ることがあります。ご本人は等分のつもりでも、時価で並べ直すと片方に大きく偏っていた──亡くなった後にそれが判明したとき、遺された家族の間で「こんなはずではなかった」が始まります。

遺言の内容を決める前に時価を把握しておくことは、この種のずれを生前のうちに、ご自身の目で検証できるということです。

遺留分に配慮した設計の前提になる

遺言は原則として自由に書けますが、遺留分を侵害する内容にすると、相続の開始後に遺留分侵害額請求(遺留分を侵害された相続人が金銭の支払いを求めること)が起こり得ます。そしてこの請求額の計算は、不動産の時価が前提です。

「長男にすべてを継がせたい」という遺言が遺留分を侵害しているかどうかは、遺産全体に占める不動産の時価がわからなければ判定できません。時価を把握したうえで、遺留分に配慮した配分にするのか、あえて希望を優先して金銭での手当てを検討するのか──選択肢を数字の上で比較できるようになります。

不動産が遺産の大半を占めるとき、分け方の選択肢を比べる

遺産に占める不動産の割合が大きいご家庭ほど、分け方の設計は難しくなります。時価がわかると、次のような選択肢を具体的な金額で比較できるようになります。

  • 一人に取得させ、他の相続人には預貯金や代償金で手当てする:代償分割(不動産を取得する相続人が他の相続人に金銭を支払う分け方)を前提にするなら、支払える金額かどうかの検証が必要です。
  • 売却してお金で分けることを想定しておく:換価分割(売却代金を分ける方法)を選ぶ場合も、いくらで売れそうかの見当が設計の出発点になります。
  • 共有で残す:一見公平ですが、次の世代の相続でさらに権利者が増え、紛争の種になりやすい選択です。安易な共有は慎重にご検討ください。

どの選択肢が良いかはご家族の事情によりますが、時価という共通の物差しがなければ、比較そのものができません。

生前の資産棚卸しに、価格等調査報告書

この段階でご提案することが多いのは、価格等調査報告書(不動産鑑定評価基準に則らない価格等調査の成果物。10万円〜15万円・税別)です。机上調査を中心に短期間で作成でき、「いま、この不動産はいくらぐらいなのか」を把握する目的には十分に機能します。

複数の不動産をお持ちの場合は、全体の棚卸しとしてまとめてご相談いただくこともできます。棚卸しの結果は、遺言の設計だけでなく、弁護士・税理士の先生にご相談に行かれる際の基礎資料としてもお使いいただけます。

資料を示しながら説明する様子

遺言のご準備の状況と不動産の内容をうかがい、いまの段階で必要な評価の範囲をご提案します。まだ何も決めていない段階のご相談も歓迎します。

生前の資産棚卸しを相談する

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CASE

想定されるケース

※ 実際のご相談内容ではなく、起こりうる状況として作成したシナリオです。実在の人物・案件とは関係ありません。

CASE 01

長男に実家、二男に預貯金。等分のつもりだった

状況

実家は固定資産税の評価額から2,000万円程度と思い込み、預貯金2,000万円と合わせて等分の遺言を検討していた。だが実家の時価は3,200万円前後だった(金額は説明のための仮の数値です)。

評価資料を用意した場合

時価を前提に並べ直すことで、配分の偏りが生前のうちに見えます。二男への配分を厚くする、実家を継ぐ長男から金銭で調整する条項を検討するなど、弁護士の先生と具体的な設計の相談に進めます。

CASE 02

遺産のほとんどが賃貸アパート1棟

状況

預貯金は少なく、遺産の大半が賃貸アパート。3人の子のうち誰かに承継させたいが、残る2人との公平をどう取ればよいか、金額の見当がつかない。

評価資料を用意した場合

収益性に基づく時価が把握できると、承継しない相続人への手当ての規模が見えます。遺留分の観点からの検証も含め、弁護士・税理士の先生との設計の土台になります。

よくあるご質問

遺言を書く前の段階で、鑑定評価書まで必要ですか。

多くの場合、必要ありません。分け方を考える材料としては、費用を抑えた価格等調査報告書(10万円〜15万円・税別)で足りることが多いです。遺留分すれすれの配分を設計する場合など、金額の精度が結果を左右する場面では、鑑定評価書をご提案することもあります。

いま把握した時価は、何年くらい使えますか。

不動産の価格は経済情勢や周辺環境の変化で動きます。一度把握した時価が何年も有効とは言えず、遺言の内容を見直すタイミングで評価も見直すことをおすすめします。数年おきの点検を前提にお考えください。

家族信託や成年後見など、認知症への備えも相談できますか。

それらの制度設計は弁護士・司法書士の先生の職域であり、当事務所がご案内できるのは制度の存在までです。当事務所が担当するのは、その前提となる不動産の時価の評価です。制度のご検討は弁護士・司法書士の先生にご相談ください。

相続税を減らすための対策も一緒にお願いできますか。

税額の試算や節税策の立案は税理士の職域のため、当事務所ではお引き受けできません。当事務所が提供するのは、対策の前提となる「その不動産が実際いくらなのか」という時価の情報です。税務は税理士の先生にご確認ください。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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