TOPIC / 共有相続・持分
「とりあえず共有」が、次の争いの種になる
分け方が決まらないから、実家は兄弟の共有名義で──。その場は丸く収まりますが、共有のまま次の相続を迎えると共有者は増え続け、売ることも貸すこともできない不動産になっていきます。

このページの結論
- 共有の不動産は、売却や建替えに共有者全員の同意、賃貸に出すにも持分の過半数の同意が必要です。一人でも反対すれば動かせません。
- 共有者が亡くなると、その持分はさらにその相続人へ引き継がれます。「とりあえず共有」を放置すると、共有者が倍々に増えていきます。
- 解消の手段は、共有者間の協議、持分の売買、共有物分割請求(訴訟になれば地方裁判所)です。
- 持分だけを第三者に売る場合は共有減価が働き、割合どおりの価値にはなりません。どの場面の価格かの区別が重要です。

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal|不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号
共有のまま放置すると何が起こるか
不動産の共有者は、自分の持分だけなら自由に処分できますが、物件全体の売却や建替えには共有者全員の同意が必要です。賃貸に出すことにも、持分の過半数の同意が要ります。つまり兄弟3人の共有なら、一人が反対しただけで売却は止まります。
より深刻なのは、時間の経過です。共有者の一人が亡くなると、その持分はさらにその相続人(共有者の子など)へ引き継がれます。兄弟2人の共有が、次の世代では従兄弟同士4〜6人の共有になり、面識のない親族と全員一致の合意を形成しなければならなくなります。実際、所有者や共有者をたどれなくなった土地が社会問題になり、相続登記の申請が義務化された背景にも、こうした共有の放置があります。
「今は決められないから、とりあえず共有で」という先送りは、問題を複雑にしてから次の世代に引き渡すことになりがちです。共有を選ぶなら、解消の道筋とセットで選ぶべきです。
共有を解消する3つの手段と、それぞれの評価
- ① 共有者間の協議で解消する:一人が全体を取得して他の共有者に金銭を支払う、全体を売却して代金を分ける、といった合意による解消です。金銭で清算する場合の基準は全体の時価であり、評価額の合意が出発点になります。
- ② 持分を売買する:共有者間で持分を買い取るのが典型です。買い取り金額は「全体の時価 × 持分割合」を基準に交渉するのが一般的で、時価の評価がそのまま金額に響きます。
- ③ 共有物分割請求:協議がまとまらない場合、各共有者は共有物の分割を裁判所に請求できます。訴訟の管轄は地方裁判所で、現物分割・代金分割(競売)・価格賠償といった方法から裁判所が判断します。手続の選択は弁護士にご相談ください。
共有減価は通常考慮しない
買い手が限られ、大幅な共有減価が働く
※ 説明のための仮の数値です。共有減価の程度は物件・持分割合・共有者の関係により大きく異なります。

持分の買い取り金額でもめている、共有を解消したいが価値の考え方がわからない、という段階からご相談いただけます。どの場面のどの価格が必要なのかの整理からお手伝いします。
持分の評価を相談する初回相談無料/ご相談内容を他の相続人に伝えることはありません
共有にする前に、時価をそろえておく
そもそも共有という選択は、遺産分割の4つの方法(現物分割・代償分割・換価分割・共有分割)の一つにすぎません。共有が選ばれる背景には、「実家の評価額で合意できないから、分け方も決められない」という事情が隠れていることが少なくありません。
評価額の土台が先にそろえば、一人が取得して代償金を支払う、売却して代金を分けるといった、共有以外の選択肢を具体的な金額で比較できます。共有登記をする前の段階でこそ、第三者による時価の評価が役に立ちます。すでに共有になっている場合も、解消の交渉は時価の確定から始まります。なお、持分の移転登記の手続は司法書士の職務範囲ですので、司法書士にご相談ください。
よくあるご質問
結論が出ないので、とりあえず共有で登記してもよいですか。
法律上は可能ですし、直ちに問題が起きるわけでもありません。ただし共有のまま次の相続を迎えると共有者が増え、話し合いの難易度が上がっていきます。共有を選ぶ場合でも、「いつ・どうやって解消するか」をあわせて決めておくことをおすすめします。判断の前提として、まず不動産の時価を相続人全員で共有しておくと、共有以外の選択肢(代償分割・換価分割)も検討しやすくなります。
持分3分の1なら、価値も全体のちょうど3分の1ですか。
場面によります。共有者間で持分を買い取る場合は、全体の時価に持分割合を掛けた金額を基準に交渉するのが一般的です。一方、持分だけを第三者に売却する場合は、買い手が限られるため割合どおりの金額では売れないのが通常です(共有減価)。どちらの場面の価格の話をしているのかを区別しないと、議論がかみ合いません。
他の共有者が売却に応じてくれません。
協議で解決しない場合、共有物分割請求という法的手続があります。訴訟になった場合の管轄は地方裁判所です。手続の選択や見通しは弁護士にご相談ください。いずれの手続でも、不動産の評価資料は判断の基礎になります。当方の鑑定評価書は訴訟資料としてもご利用いただけますが、裁判所の判断を拘束するものではありません。
共有持分だけを買い取り業者に売るとどうなりますか。
持分は自分だけの判断で売却できますが、市場価格に持分割合を掛けた金額より大幅に低い価格になるのが通常です。また、他の共有者にとっては見知らぬ業者と共有関係になることを意味し、親族間の関係悪化につながりがちです。売却前に、適正な持分の価値を把握したうえで、まず共有者間での買い取りを検討することをおすすめします。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません
物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。