PROPERTY / 実家・戸建住宅

実家の分け方は、時価が決まらないと動かない

相続財産の大半が実家の土地建物で、預貯金はわずか──遺産分割で最も多い構図です。誰かが住み続けるのか、売るのか、空き家のままにするのか。どの道を選ぶにも、出発点は「実家がいくらか」です。

日本の戸建住宅

このページの結論

  • 実家の価格は土地と建物の合計です。それぞれ評価の方法が異なるため、分けて考える必要があります。
  • 「築20年超だから建物はゼロ」という扱いは取引慣行であり、鑑定評価では維持管理の状態やリフォーム履歴を踏まえて判断します。
  • 実家に住み続ける相続人がいる場合、他の相続人に支払う代償金の前提として時価の合意が要になります。
  • 空き家のまま持ち続ける選択肢には、管理コストと相続登記義務化(2024年4月施行)という現実的な負担が伴います。
吉田 健人

執筆: 吉田 健人(不動産鑑定士 登録番号 第11191号)
株式会社KRE Appraisal不動産鑑定業者登録 東京都知事(1) 第2987号

住む相続人と、住まない相続人──実家をめぐる典型的な対立

実家の遺産分割で話し合いが止まるパターンは、大きく2つあります。

1つ目は、実家に住み続けたい相続人がいるケースです。親と同居していた長男が住み続け、他の相続人には代償分割(不動産を取得する相続人が、他の相続人に金銭を支払って清算する分割方法)で代償金を支払う──よくある形ですが、代償金の額は実家の評価額から直接計算されるため、評価額で折り合えなければ先に進みません。住み続けたい側は低い評価を、代償金を受け取る側は高い評価を主張しやすく、双方が別々の査定書を持ち寄って開きが埋まらない、という状況が生まれます。

2つ目は、誰も住む予定がないケースです。売るのか、貸すのか、当面持ち続けるのか。方針が決まらないまま「とりあえず共有」で登記すると、固定資産税や管理の負担の押し付け合いが起き、次の相続でさらに権利者が増えて身動きが取れなくなります。共有相続のリスクは別ページで詳しく解説しています。

どちらのパターンでも、私たち鑑定士がまずお勧めするのは「評価額の土台を先にそろえる」ことです。金額の根拠が共有されると、感情の対立と金額の議論を切り分けやすくなります。

土地と建物は、別々の物差しで評価する

戸建住宅の価格は土地と建物の合計ですが、評価の考え方はそれぞれ異なります。

土地は、周辺の取引事例と比較して評価します。ただし「近所の相場坪単価 × 面積」では決まりません。形状(整形地か不整形地か)、間口、前面道路の幅員、高低差、用途地域といった個別性が価格を動かすためです。相続税の路線価(相続税・贈与税の計算のために国税庁が定める道路ごとの価格)で代用する案もよく出ますが、路線価は時価の8割を目安に設定された課税のための価格であり、そのまま分割の基礎に使うと取得する側が有利になり得ます。詳しくは路線価と時価の違いをご覧ください。

建物は、「もう一度建てたらいくらか(再調達原価)」から出発し、経過年数だけでなく、維持管理の状態・リフォームの内容・現に使用されている状況を踏まえて減価を判断します。仲介実務には築20〜25年程度の木造住宅をゼロと置く慣行がありますが、これは税務・融資上の耐用年数(木造22年)に引きずられた割り切りです。親が晩年に水回りを全面改修した実家と、長年手を入れていない実家では、同じ築年数でも評価は変わり得ます。

空き家のまま、が一番高くつくことがある

結論を先送りして実家を空き家のままにしておく選択には、目に見えにくいコストが伴います。

  • 維持費:固定資産税・都市計画税、火災保険料、水道光熱費の基本料金、庭木の手入れや通風のための定期的な訪問。遠方に住む相続人には交通費もかかります。
  • 資産価値の低下:人が住まない建物は傷みが早く進みます。管理が行き届かず「特定空家」(倒壊等のおそれがあるとして市区町村が指定する空き家)に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れて税負担が増える可能性もあります。
  • 相続登記の義務化:2024年4月から相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が求められます。分け方が決まらないと登記も進みません。登記手続の詳細は司法書士にご確認ください。

「揉めたくないから先送り」が、結果として全員の負担を増やすことは珍しくありません。時価を把握して分け方の議論を前に進めることが、負担を止める近道になります。なお、戸建住宅(土地+建物)の鑑定評価書の費用は25万円〜40万円(税別)が目安です。詳しくは料金ページをご覧ください。

資料を示しながら説明する様子

実家の所在地・おおよその土地建物の面積・築年数・現在誰か住んでいるかをうかがえれば、評価のポイントになりそうな要素と費用の見当をお伝えします。

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よくあるご質問

築30年の実家です。建物の価値はゼロと考えてよいですか。

仲介実務では築20〜25年程度の木造住宅の建物価値をゼロと見なす慣行がありますが、これは税務・融資上の耐用年数に引きずられた取引上の扱いであり、現に使用できている建物の価値がゼロという意味ではありません。鑑定評価では、維持管理の状態やリフォーム履歴を踏まえて建物の価値を検討します。ゼロという結論になる場合もありますが、機械的に決めるものではありません。

実家に住んでいる相続人がいて、中に入れません。評価できますか。

外観調査と資料(登記事項証明書・固定資産税納税通知書・間取図等)に基づく評価は可能です。その場合、室内の状況は資料によった旨とその前提を成果物に記載します。他の相続人に知られずに進めたいというご相談にも対応していますので、ご事情をお聞かせください。

誰も住む予定がありません。それでも評価は必要ですか。

売却して代金を分ける換価分割を選ぶ場合でも、「いくらで売りに出すか」「提示された買付価格が妥当か」の判断材料として時価の把握が役立ちます。また、売却まで時間がかかる間の管理負担を誰が負うかという論点も、資産価値が分かっていたほうが話し合いやすくなります。

実家を相続したら、登記はどうすればよいですか。

相続登記(相続した不動産の名義変更)は2024年4月から義務化されており、取得を知った日から3年以内の申請が求められます。登記手続は司法書士の職域ですので、司法書士にご相談ください。当方は、その前提となる遺産分割のための時価評価を担当します。

鑑定が必要かどうかの確認だけでも構いません

物件の内容と手続の状況をうかがい、どの資料が必要か、費用はいくらかをお伝えします。必要がなければその旨をお伝えします。初回のご相談は無料です。

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